長い歴史の中で様々なものが変わりますが、旅も変わり旅の食事も変わってきました。今では飛行機で海外へ行くことは一般的ですし、未だごく一部の人に限られますが、宇宙へ飛び出すことすら可能となっています。
宇宙旅行は簡単なことではありませんが、昔の船旅も大変な危険を伴うものでした。始まりつつある宇宙旅行と7~8世紀に行われた遣唐使の船旅、およびそれぞれの食事について考えたいと思います。
宇宙旅行と宇宙食
長い歴史を経て、人類は科学技術を進歩させ旅の範囲を広げてきました。現代ではもうほとんど地球上(陸地)に未知と呼ばれる地はなく、茫漠たる宇宙が旅の対象になろうとしています。
未だに宇宙に行くことは簡単ではないですが、50年以上にわたって月と地球の間を何回も往復し、無人の宇宙船を火星に着陸させる程になっています。近い将来、旅行会社による宇宙旅行のツアー募集が一般的になるかもしれません。
そうなると、旅の楽しみにつき物の食事はどうなるでしょうか。
現在の宇宙食では、無重力環境に対応するために液体類には粘性が高められています。例えばラーメンの場合、麺は飛び散らないよう俵状になっており、あんかけ状のスープに絡めて食べます。
また、保存性も重視されています。当初、食料は缶詰でしたが、現在ではレトルトやフリーズドライなどの保存技術の発展によりバラエティの幅が広がりました。宇宙ステーションに長期滞在する宇宙飛行士は出発前に試食を行い、好みのメニューが宇宙で提供されるそうです。
宇宙旅行が身近なものになれば、より華やかな食事メニューが開発されるに違いありませんし、宇宙ならではのエンターテインメント性の高い食事空間の工夫があることでしょう。
遣唐使の危険な船旅(帰還率:26隻/36隻)
宇宙旅行が始まりつつある現代から、翻って歴史を1300年ほど遡ります。この時代、日本は外交目的と各種の先進技術や統治制度や仏教を学ぶ目的で、中国大陸へ遣唐使を十数回派遣しました。当時、海を渡って大陸に行くことは、現代において大気圏を超えて宇宙空間にたどり着くのと同等かそれ以上の危険を伴いました。
渡航ルートは朝鮮半島沿いに進むルートや東シナ海を横断するルートなどがあり、所要日数は順調であれば10日以内だったそうです。
遣唐使船は搭乗員数が100~150人ほどの、長さ30メートル程度の木造帆船です。帆船であるため天候の影響を強く受け、一定以上の遭難のリスクがあります。諸説ありますが、15回の遣唐使派遣で合計36隻が日本を発ち、10隻が帰国できなかったともいわれています。特に帰国時は冬の強い季節風を利用するため、危険度が高かったようです。
1つの例として4隻で上海を出帆した例を見ます。出帆まもなく嵐で遭難し、1隻は種子島に漂着し4ヶ月後に平城京に帰還しました。1隻は付近の中国大陸沿岸に流れ着き、翌々年に帰還しています。1隻は行方不明で、最後の1隻はベトナムまで流され、生き残った4人のみが唐の首都である長安まで戻り、そののち6年ぶりに日本に帰国しました。
このように遣唐使の旅は命がけだったわけですが、その労力と犠牲のおかげで、文化・技術・政治の面で日本に大きな影響をもたらせたのです。その時代の政治家や留学生の使命感や胆力には畏敬の念を覚えます。
遣唐使船での食事
遣唐使の命懸けの船旅での食事とは、一体どんなものだったのでしょうか。
はっきりしたことは分かっていませんが、航海に要する日数が分からないため、日持ちするものだったようです。
主食は干し飯(ほしいい)です。炊いた米または蒸した米を天日干しにして乾燥させたものです。現代の震災時や登山の際に用いられる「アルファ化米」に似ています。歯が丈夫であればそのままでも食べることが出来ますが、かなり歯ごたえがあります。遣唐使船の上で火事を出したという記録もあるため、湯を沸かして干し飯にかけて食べていたと思われます。
おかずも必然的に乾物になるはずです。干物は縄文時代からあるものなので、イワシなどの魚の干物、干しアワビ、乾燥した昆布やワカメや木の実などを船内に持ち込んでいたと想像できます。
昆布は日本の味としてすっかり食生活に定着していますが、古くから貴重品であり交易の品とされていますので、遣唐使での献上品の一つにもなっていたでしょう。
長い歴史の中でも普遍的な食品の加工法
「21世紀の大気圏を超える挑戦」と「7世紀の海を越える挑戦」は、環境は違うものの共に人間が持つポジティブな使命感・冒険心・探求心の現れだと思います。
食事も1300年を経て大きく変わりましたが、旅の食事において共通テーマの一つが“保存性”です。昔はフリーズドライやレトルト殺菌はありませんでしたが、4000年前から今日に至るまで続いているのが“干し”です。今でも続いている理由は、フリーズドライやレトルト殺菌が成し得ない保存性以外の価値も持っているためと考えられます。それは、“干し”が生み出す凝縮された旨味や味わいです。
長い歴史の中で変わらないものは、人の探求心にせよ凝縮された旨味にせよ、普遍的な価値があると改めて感じました。
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この記事を書いた人
- 食いしん坊侍 代表 大森 弘理
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2009年にBFK㈱を設立し、「食いしん坊侍」商品を開発、展開。
食材や料理の背景にある自然や歴史にも強い関心をもって活動しています。機会を見つけて生産現場に赴き、時には漁師体験をさせてもらい勉強しています。
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