北の幸 ホタテ漁体験


漁師のツテがみつかって(しまった)

函館の漁師にツテが出来たため、4月に、会社メンバーと2人でホタテ漁の体験に行ってきました。
漁業体験は初めてでしたが、これほどまでにハードだと知らずに、、、

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食品流通に携わる者として、常々、食材に強い興味を持っていますが、体を使った体験をすることで分かったことが様々ありました。
そして、自然の力の不思議さに感動し、自然に向き合う漁師の方達への感謝の想いが、より強くなりました。

噴火湾を目指す

落部という噴火湾に面した漁港が、今回の目的地です。
函館市内からの車中、漁師の方から今年の養殖の状況など聞きながら、北へ向かいます。
海が見えてくると、徐々に緊張が高まってきます。

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ホタテの養殖で最も忙しくなるのが、3月後半から5月中旬。
この時期に、大きくなった二年貝のホタテを出荷する作業と、1年育てたホタテの養殖2年目の準備が集中します。つまりこの時期は最も忙しい時期なのです。
去年の台風の影響で、一部の一年貝が流される被害があり、今年の獲れ高は例年より少ないとのことでした。

 

絶品漁師メシ

明朝の漁を前にして、漁師さん宅で豪勢な夕食を頂きました。
ホタテのシーズンということで、ホタテの刺身のほか、ホタテの天ぷら、ホタテの味噌和え、乾燥させたホタテ、ホタテ・ワカメ汁と、バリエーション豊富。
刺身の美味しさは、「新鮮とは何か」を突き付けられるもので、未だかつて経験したことのない、しっかりした食感と、自然の海ならではの完璧に調和のとれた旨味を味わいました。

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特筆すべきは、ワカメです。正真正銘の生のワカメで、これまで食べてきたワカメとは全く別物。ホタテと一緒に汁にしたものは絶品。
こうして、贅沢な本場の漁師メシをたっぷりと堪能させていただきました。
本当にありがとうございました!

2時出漁

午前1時起床。興奮と緊張のためか、昨晩の酒は体に感じず、寒さもあまり感じません。
船酔い止めの薬を飲み、カッパと手袋を慣れない手つきで身につけ、歩いて漁港へ。

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2時前に乗船。乗り込むのは我々素人2人を入れて6人。
6人目が乗船すると、ほんの数秒で漁船は出航。暗闇の中、波を蹴りわけ、ウキに取り付けた発信機を頼りに漁場へ向かいます。
暗い海上のあちこちに見える他の漁船の灯りが、漁の臨場感を高めます。何やら、狩猟本能が呼び起こされたような高揚した気分になってしまいました。

ホタテ漁

漁場に着くと、漁師の方達は暗い海面を覗き込み、仕掛けの目印であるウキを探し、15センチ大のイカリを海に投げ込み、仕掛けを引き上げます。
この仕掛けの横縄には、何本もの縄が垂直に垂らされていて、数十個の“ザブトン”と呼ばれる網籠が取り付けられています。籠の呼び名は、座布団に形が似ているからでしょうか。
その“ザブトン”の中に入っているのが、養殖1年目のホタテです。

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我々の作業は、この“ザブトン”からホタテをプラスチック製のケースに移し替えるものです。
ザブトンの一角には、切れ目があり、ここからホタテを振り落とします。

時間を無駄にしない

ザブトンからホタテをケースに振り落とす作業を2時間以上も続けると、腕はもちろん、足腰、首、背中にも疲労を感じてきます。
しかし、漁師の方たちは、船にいる3時間ほど一切の休憩を取りません。笑顔で話をしていても、手は休みなく動いています。
海が時化ている時は出漁できません。つまり、時間も自然から与えられるものなので、まさに“時は金なり”そのままに、時間を大切にされているのです。

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ザブトンからホタテを振り落とす動きなどを、自分なりに思考錯誤しながら、なんとか船上での2時間半ほどの作業を終えました。
港に帰る船上、早朝の美しい駒ヶ岳を遠望しながら、少しばかりの達成感に浸りました。
しかし、陸に戻ってからも、作業はまだまだ続く、、、

ガチャガチャ

港に戻ると、大量のホタテの入ったケースを船からトラックに積み、作業場へ移動。
我々に与えられた任務は、通称“ガチャガチャ”と呼ばれる選別機で、ホタテを選別する作業でした。
機械の上部に投入されたホタテの群れは、一面に沢山の穴が開いている通路の上を、揺すられながら機械の下方に運ばれてきます。小さなホタテは穴から落ち、大きなホタテが残り、仕分けていくという仕組みです。
ホタテを機械が揺する際に、ガチャガチャと音が響きます。

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機械上部にホタテを投入するためには、肩の高さくらいまで、ホタテ満載のケースを担ぎ上げる必要があります。
100ケースを超えるホタテを投入するため、相当な運動量を伴うハードな作業です。
そのため、この作業の後の朝食では、子供の頃以来だと思われる量の朝食を食べました。

耳吊り

美味しく朝食をいただいた後は、別の作業にチャレンジです。
ホタテの養殖では、籠の中で育てられる1年目と異なり、2年目はロープに数珠繋ぎに吊るされて育てられます。
海中に戻す前に、“ホタテの耳”つまり貝殻の端の部分に穴を開け、細いロープを通し、数珠繋ぎにする作業が、“耳吊り”と呼ばれるものです。

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ホタテは生きているため、この日水揚げされた大量のホタテに“耳吊り”を施し、午後に海に戻さなければなりません。
そのため、家族の方は勿論、近所の多くの方々も作業に加わっています。
皆さん、冗談いい合いながら会話しつつも、猛烈なスピードでホタテの貝殻にロープを通していく様子には驚きました。
“耳吊り”は、ホタテの養殖の中で、非常に重要な工程と言われています。
その練度を競うべく、今年、“耳吊り選手権”というものが開催されるようです。

居酒屋反省会(まとめ)

今回の漁体験では、①“ザブトン”水揚げ作業、②“ガチャガチャ”作業、③“耳吊り”作業をさせていただき、終了となりました。
わずか1日ではありますが、想像以上の刺激を受けることができました。

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帰途、函館の居酒屋で、反省会。
漁業体験を通して、漁業そのものの大変さやエキサイティングさ、自然の力や不思議さについて、様々語りました。
中でも、海の上で船に揺られ自然や生命に向き合う、“海の男”の活動の一端に触れられたことが、強烈に刺激的でした。
また機会があれば、是非参加したいです。

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この記事を書いた人

食いしん坊侍 代表 大森 弘理
食いしん坊侍 代表 大森 弘理食いしん坊侍 代表
2009年にBFK㈱を設立し、「食いしん坊侍」商品を開発、展開。
食材や料理の背景にある自然や歴史にも強い関心をもって活動しています。機会を見つけて生産現場に赴き、時には漁師体験をさせてもらい勉強しています。

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