多様性が持つ調和力
私の中には「自然への憧れ」があるようです。
平和で安全な日本に生まれ、画一性が溢れる東京で育ちました。東京は好きですが、無い物ねだりとでも言いましょうか、解放感、多様性、野生を感じやすい自然に惹かれます。(話はそれますが、私は無類の猫好きです。猫はどんな都会の中で育とうとも、ワイルドに自由にしなやかに調和して生きているので、そこに無意識のうちに惹かれているのかもしれません。)
食に対しても、「自然」を尊重したものに心が惹かれます。
例えば、人工的に高度に精製されたうま味調味料は、うま味自体が強く明瞭ですが、この調味料を使った料理は単調に感じることが多くあります。
一方、昆布や鰹の出汁は、人工的なものよりもハッキリしない、奥行きのある淡いうま味です。そして、他の食材の多様性のある風味をより効果的に引き立てることができます。自然そのものが多様性を含んで調和しているものだからだと思います。
自然界の多様性もそうですが、食に対する多様性、味に対する多様性を尊重することも、大切なことだと考えます。