歴史という調味料


歴史と食を紡いでいく

私は子供の頃から歴史小説を読むのが好きでした。歴史の本を読むと、食に関することが登場します。食いしん坊である私は、食事シーンが出てくれば、小説への没入感も増します。
そのうち、歴史と食を結び付けた、何かしらの表現がしたいと思うようになりました。

背景にあるものが見えてくれば、知的好奇心を刺激されて物事は面白くなります。
例えば、神社仏閣城郭などの名跡を見学するとき、ガイドを活用して歴史背景を知って見学するのと、知らないまま見学するのとでは感動のし方がまるで違います。
同じように、何かを食べるにしても、歴史的背景・事象を知った上で味わったほうが美味しい(幸福感が強い)と思います。

味覚は五味と言われていますが、新たに“歴史的背景・事象で味わう”という味覚をプラスした幸福感を提案していきたいと考えております。

一つ具体的なストーリーをご紹介いたします。
大坂城築城の際に、重い石材を運ぶ工夫として濡れてつるつるとした昆布を下に敷き、その上に石を滑らせて運んだそうです。
築城工事の後に大量に残された昆布を煮込んだところ、美味しい出汁になり、そのことが関西の出汁文化定着のきっかけとも言われています。

歴史や文化とは、人の歩み、人の工夫の集積です。
時代を超えて残されている食文化には、熟成された普遍的価値があると考えます。
故きを温(たず)ね、新しきを知る気持ちを忘れずに、歴史と食を紡いでゆく取り組みができたらと思います。